内閣支持率調査は、新聞社をはじめとする各メディアが定期的に行っています。
そして、「支持率が数か月ぶりに不支持を上回る」とか「支持率前回調査比-5ポイント」等、見出しをつけて新聞やニュースで取り上げられますよね。
支持率はメディア間でばらつきがあったり、ネットの声と違っていたりしますよね。
そのため、「からくりがあるのでは?」「嘘の世論調査だ」等と噂されています。
そこで、ここでは、支持率にからくりはあるのか、メディアの世論調査は嘘なのかを統計学の観点から考察したいと思います。
実際の岸田内閣の支持率は40%程度!?
各種メディアの世論調査を勘案すると、実際の岸田内閣の支持率は2023年6月現在で40%程度と言えそうです。
まずは、NHKの世論調査を例に挙げてみます。
(引用:NHK選挙WEB)
2021年10月に岸田内閣が発足した当初は支持率は約50%で不支持率は約25%でした。
その後、少しずつ支持率を伸ばし、2022年7月の参院選直後は約60%の支持率を記録します。
ところが、故安倍晋三国葬儀や旧統一教会に関する問題とともに支持率は低下、初めて不支持が支持を上回り、その後3割台にまで落ち込みます。
2023年3月には岸田総理がウクライナを訪問、同年5月に広島にて開催されたG7サミットが成功し、6月現在、NHKの調査では支持率は約4割強、不支持率は約4割弱とされています。
以上、まずはNHKのよる世論調査をもとに、岸田内閣の支持率について見てきました。
次に、他のメディアについても支持率を見ていきます。
各メディア間で支持率が異なるのには、からくりはあるのでしょうか。
支持率のからくりはあるのか?各メディア間の違い
支持率のからくりはあるのか?まずは、各メディア間の違いについてご紹介します。
2023年6月に実施された、大手新聞社の支持率の世論調査の結果です。
実施日 | 支持 | 不支持 | 無回答他 | 重ね聞き | 調査員 | |
朝日新聞 | 17~18日 | 42% | 46% | 12% | 無し | 人 |
毎日新聞 | 17~18日 | 33% | 58% | 9% | 無し | 自動音声・SMS |
共同通信 | 17~18日 | 40.8% | 41.6% | 17.6% | 無し | 人 |
産経新聞 | 17~18日 | 46.1% | 49.2% | 4.7% | 有り | 人 |
読売新聞 | 23~25日 | 41% | 44% | 15% | 有り | 人 |
日経新聞 | 23~25日 | 39% | 51% | 10% | 有り | 人 |
各社それぞれ、無作為に抽出された電話番号に発信する方法をとっています。
そのため、新聞購読者の中から選んでいるわけではないので、新聞社のカラーが出ているわけではなさそうです。
では、各社の数値が少しずつ異なるのはなぜでしょう。
- 調査時期
- 固定電話・携帯電話
- 重ね聞きの有無
- 調査員が人か
調査時期
調査前の政府の動向が支持率に如実に反映されるのは先ほど見た通りです。
ですから、調査時期が1週間異なるだけでも支持率に関する有権者の判断材料が異なります。
今回は大まかに言うと、前半の世論調査にはG7広島サミットがプラスに、後半の世論調査には忘年会写真の流出やマイナカードの情報流出がマイナスに働いたかもしれません。
固定電話・携帯電話
一般的に固定電話回答者の方が保守的で、自民党支持率が高く出やすいと言われています。
一方、携帯電話回答者は「支持政党なし」や「どちらとも言えない」が多く出やすいそうです。
固定電話と携帯電話の回答者比率に決まりはないため、多少の影響は考えられるでしょう。
重ね聞きの有無
重ね聞きとは、現内閣を支持するかどうかの質問に対し、「わからない」「どちらとも言えない」等明確な回答を避けた場合に調査員がもう一度聞くことです。
もう一度「どちらかと言えば?」「強いて言えば?」と聞かれると、答える人は増えます。
ですから、重ね聞きをする新聞社の方が重ね聞きをしない新聞社よりも、支持率も不支持率も数字的には高く出ると言われています。
読売新聞が世論調査特集。対象は無作為抽出で新聞購読の有無とは無関係。内閣支持率について、同社は回答が曖昧な場合、一回だけ「どちらかと言えば、支持しますか、支持しませんか」と重ね聞きする。この重ね聞きルールの違いが、会社による支持率の数字の違いの一因、と。 pic.twitter.com/yO5R34Hsax
— Shoko Egawa (@amneris84) July 18, 2020
調査員が人か
調査員が自動音声の場合、調査員が人の場合に比べて迷いや忖度がないと言われています。
そのため、自動音声の方が本音に近い回答なのではないかとも言われています。
内閣支持率の世論調査の電話二回かかってきたけど、安倍内閣支持しませんを選択すると、「ご協力ありがとうございました」と素っ気なく切られた。二回とも。なんでもかんでも疑いたくはないが、数字操作してるんじゃないか疑惑がふつふつ。
— poripe (@poripori__po) June 3, 2019
ただ、このように、支持しないを選択すると調査が終了するため、数字にからくりがあるのではないかという意見もあります。
不支持選択の時点でその後の質問は意味がないと判断して切っているのかもしれないかなとは思いましたが、いずれにしても回答者には疑問が残るでしょう。
中にはこのような意見もありました。
内閣を支持しないと回答したら電話が切られたから世論調査は不正なんだというような話が定期的に出るけど、そもそも本気で不正をするのならわざわざ無駄なコストをかけてまでそんな実態を露見させるような方法はとらない。そんな想像力も無いようじゃ、水素水とかが流行るわけだよなって思う。
— 三春充希(はる)⭐第50回衆院選情報部 (@miraisyakai) May 7, 2017
以上、支持率のからくりはあるのか?まずは、各メディア間の違いについてご紹介しました。
次に、メディアは嘘をついているのか。ネットの声との乖離をご紹介します。
メディアは嘘をついている!?ネットの声は?
次に、メディアは嘘をついているのか、ネットの声との乖離をご紹介します。
かつて、世論調査の支持率と言えば、先ほど見てきたような各メディア間の結果の差について疑問が投げかけられていました。
しかし、昨今のSNS普及・浸透により、メディアVSネットのような構図が浮かび上がっています。
おはようございます
最近は毎日のように海外へのお金の支援をやっているみたいですね
日本のためになるばら撒きなら文句はないですがね、真相はどうなんでしょうか
それにしても支持率40%とかまず嘘でしょう
5%でも多いと思うこの頃です本日もお仕事頑張りましょう
七夕の準備がんばるぞ💪— カーサービス 黒の兄弟 (@KURONOKYODAI) July 3, 2023
こちらは、支持率が嘘だという意見ですね。
岸田内閣の支持率まだ40%もあるって嘘だろ?0.4%の間違いでしょ
— 彩風 (@chocomint69_369) July 4, 2023
こちらも、メディアの公表する支持率が嘘だという意見です。
では、ネット上の岸田内閣支持率はどうなっているのでしょうか。
岸田内閣支持率😆🤣 pic.twitter.com/kfhrrPVCg9
— ネコ (@chack358) June 26, 2023
こちらは、岸田内閣支持率が3%で、不支持率が95.7%となっています。
きっとそうよ
私のお気に入りの日本アンケート協会の結果は、内閣・総理の支持率がともに1%未満ですしw
今日の内閣支持率 https://t.co/Z41tQMf5Q3 #内閣支持率 via @JRA_Cabinet_Bot pic.twitter.com/HwEhl5eB8R
— しお@塩分100% Let’s regain democracy in JPN! (@shiotheoshio) June 26, 2023
こちらに至っては、支持率が1%未満ですね。
さすがにここまでくるとネタであって、真に受けている人はいないと思いますが・・・
これらのアンケート調査には統計学的観点から欠陥があります。詳細は後述します。
内閣支持率が20%台に。それでも高過ぎる。
世論調査の回答者は高齢者が殆どだから、年金支給額を減らされた年寄りたちが今の政権を支持するはずがない。
いつものように、メディアが下駄を履かせているのだろう🧐#内閣支持率 #岸田首相 #岸田やめろ pic.twitter.com/y4ajUM0oWq— YOSHI (@tigerhouse1978) June 23, 2023
ネット上にある声は、「自分自身の意見」と「世論調査の支持率」に乖離があっておかしいと言っている傾向にあるようです。
不支持が支持を上回っている時点で、政権は支持されていないと言ってよいと思いますが、まだ20%の支持層がいることが納得できないということでしょうか。
私の周辺では安倍内閣の支持率は0%。報道される支持率のからくりを知りたい。
— 遠矢かえ子*高槻市議会議員(りっけん) (@Tohya_Kaeko) July 12, 2018
こちらの立憲議員さんは「私の周辺」と「報道される支持率」にからくりを感じているようです。
立憲議員さんの周辺で安倍内閣を支持する方がいたなら、そちらのからくりの方が私は知りたいです。
たしかにメディア間の結果に差が生じていることは否めませんが、全体を俯瞰してみればおおむねメディアの数値は似通っていると言えるでしょう。
そのため、メディアが嘘をついていると断言はできないように思います。
むしろネット上の支持率・不支持率の数字の方がよっぽど不自然ですよね。
以上、メディアは嘘をついているのか、ネットの声との乖離を紹介しました。
最後に、ネット支持率のからくりを統計学の観点からお伝えしましょう。
ネット支持率のからくりは?統計学の観点から
ネット支持率のからくりを読み解くには、情報をきちんと読み取る力(情報リテラシー)が必要です。
情報リテラシーを身につける
情報リテラシーとは、世の中に溢れるさまざまな情報を適切に活用できる基礎能力を指します。
情報の真偽を判断する能力・情報を適切に活用する能力です。
具体的には、フェイクニュースの見極めやSNSの適切な利用ですね。
では、先ほどの支持率3%や1%の調査結果という情報を情報リテラシーに基づいて正しく判断したいと思います。
ここで、統計学において非常に重要な観点をご紹介します。
※母集団・・・調査対象者全員からなる集団
※標本・・・・選び出された人々からなる集団
※抽出・・・・選び出すこと
先に見た、支持率3%のグラフの写真では、右下に「日経CNBC視聴者が対象」と書かれています。
この時点で、有権者からの無作為の抽出とは言えなくなってしまいました。
【ネット内閣支持率】
ネット上での岸田内閣支持率のアンケート調査は0.2%
不支持率は99.8%とネット民の殆どが不支持。
ネットアンケートで「従来のアンケートが間違い」と主張する人もいますが、それは間違いと思う。#内閣支持率 @JRA_Cabinet_Botより pic.twitter.com/2Cmjq2XN4t https://www.jra.net/ank/online/naikaku.php— 牧園 (@general_fand) June 28, 2023
なにせ、そこに興味のある人が回答しますからね。
夕刊フジが自分とこのネタにネットアンケートよくやってる— 飛鳥五郎🇯🇵 (@mKY1PPidxxtX8F5) June 28, 2023
この方も書かれていますが、興味がある人だけが回答する方法は無作為ではなくなってしまい、偏りが生じます。
さらに、内閣支持率の統計をとりたい場合、母集団は有権者であるべきですが、インターネット上では有権者であることが担保されていないですよね。
つまり誰でも投票できてしまうというわけです。
ここに、ネット上の岸田内閣不支持率99%のからくりがあったんですね。
よって、先ほどの支持率3%や1%の調査結果という情報を統計学に照らして判断したところ、正確ではない支持率ということが分かりました。
一つの調査結果だけでなく複数の調査結果を勘案する
各新聞社の世論調査からもわかるように、タイミングややり方によって調査結果にはブレがあるようです。
また、一部でも言われているように、各メディアの忖度があるのかないのか、これは正直わからないと言わざるをえません。
大切なことは、一つの調査結果だけを見るのではなく複数の調査結果を広い視野で平均的に見ることではないでしょうか。
また、溢れた情報の中から自分の意見に都合のいい部分だけを拾い読みしないこと。
逆に、自分の意見に合わない情報=嘘・捏造という短絡的な思考を辞めること。
結局、こういった考え方も情報リテラシーの一部であると言えると思います。